部活動は無給 School club "Bukatsu" is a unpaid work


前回は、部活動のよいところを紹介しました。
しかしお気づきの通り、この制度も多くの問題をはらんでいます。この制度がどのような犠牲の上に成り立っているのか、それをこれから紹介しましょう。



ほとんど教育法規で定められていない

実は、部活動には長い間法律上の規定がありませんでした。
平成20年度に、学校教育の内容を細かく示した「学習指導要領」に、はじめて「部活動」の文字が現れます。それまでは、旧文部省は何も言ってないけど、学校がなんか勝手にやってる活動でした。

ちなみに現在の規定はこちらです。

第1章 総則

第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しま せ、学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との 関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や 社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。



以上です。
簡単に言うと、

  • 部活動は生徒の自主的な活動です
  • スポーツ、文化、科学などに親しませよう
  • 教育課程と関連させよう
  • 地域と連携しよう

ということになります。

部活動の目標やありかたについて書かれていますが、実際の内容や時数についての規定はありません。そもそも、実施するべきだとも書かれてはいません。ちなみに、授業や行事などの内容を定める規定は、この文章の百倍以上あります。学校教育の中で、いかにあいまいな位置づけであるかが理解できるでしょう。

こちらもわかりやすい
ベネッセ教育情報サイト 実はあいまいな「部活動」の位置付け


平成30年6月追記


平成30年3月、スポーツ庁により「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が策定されました。今後、教育機関はこのガイドラインに従って部活動を行うことになります。いい部分も悪い部分もあり、とくに悪い部分が気になるので、こちらの記事にくわしく記述しています。

スポーツ庁 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン



部活動指導は無報酬

教員が部活動を指導することに対する報酬はありません。
教員には部活動の顧問を担当している者とそうでない者がいますが、報酬に違いはまったくありません。平日週5日、勤務時間を超えて16時から18時30分まで指導しても、完全に無給です。

休日の指導についてはどうでしょうか。
この場合は、4時間以上の指導に対し、部活動指導手当が支給されます。「4時間につき」ではありません。4時間以上無制限、すなわち日額です。その金額は、平成29年現在の東京都で3,600円です(全国では3000円)。そして4時間以下であれば支給されません。これが教育職員の高度な生徒指導、技術指導、管理責任、そして休日の引率時間に対する報酬です。
しかしこれでも年々かなりの上り幅で増額されていて、私が働き始めた平成22年では2,400円でした。さらに平成元年では、日額620円でした。


労働基準法では、休日出勤について35%以上の割増賃金を支払うことと定められていますが、部活動は職務ではないという超理論で無効です。手当の基準を「4時間以上無制限」と定めている根拠も不明です。


平成30年6月追記


平成30年1月より、部活動特殊勤務手当は日額3000円から3600円へ引き上げられました。また、平成31年1月より、2時間以上4時間未満の勤務には1800円が支給されることとなりました。
私はこの待遇改善を歓迎しません。それは問題の本質を解決するものではないからです。


こちらの記事は最高
ルネサンス高等学校教育ネットマガジン
部活動手当ての支給要件見直し、ブラック問題の解決にはほど遠く
キャリコネニュース
中学校教員の休日の「部活動手当」2割増案に批判殺到 「3000円が3600円じゃ意味ない」「文科省はブラック」
斗比主閲子の姑日記
平日残業代なし、土日出勤4時間以上で時給600円の部活動顧問という仕事



必要経費も支給されない

ところで、部活動の指導に必要な費用についても書きましょう。

大会などで校外へ生徒を引率する場合、交通費は支給されません。運動部の顧問になれば、競技に合わせたウェアやラケットなどが必要となりますが、個人で購入します。指導技術のための研修費も支給されません。たとえばバレーボール部の顧問の教員には審判の義務がありますが、審判技術を得るために、自分でお金を払って審判資格を取得する必要があります。研修は休日に行われますが、生徒を引率しているわけではないので、部活動指導手当も支給されません。

部活動には法律上の規定がないために、このように正気を疑う報酬制度で運営されているのです。


次回に続きます。