さくらんぼ計算がにわかにネット上で話題をさらっています。
10数年前から※1小学校で取り入れられている計算方法なので、今の小学生の親世代にはなじみのないやり方だと思います。初見の感想は、「え、何これ。……ああそういうことか。なんでわざわざこんなことするの? わかりにくくない?」であることでしょう。
※1 J-CASTニュース 小学校算数の「さくらんぼ計算」に戸惑う声 文科省の見解は?
2018年11月12日、ツイッターでこの計算方法を批判するツイートが人気を集めました。賛否両論の論争になりましたが、数の上では批判が圧倒的です。その内容はおもに次の三点のようです。
たしかに。どうして学校ではこのような方法を取り入れているのでしょうか。
小学校1年生の算数でつまずく子が多い単元の一つが、繰り上がりのある足し算です。これにはいくつかの原因があります。
まず、10のまとまりという考え方が現れることです。大人にとってごく当たり前の十進法という考え方を、子供はここで獲得します。
次に、指を使った計算ができないことです。これまで実物を用いてやってきた計算を、頭の中で行わなければならなくなります。
という二つのハードルをクリアしなければならないので、繰り上がりのある足し算は、それまでの計算と比べ物にならないくらい難しいのです。
計算に慣れた人から見ればわずらわしくも見えるさくらんぼ計算ですが、小さい子が繰り上がりの考え方を身に付けるのに適した方法なのです。
さくらんぼ計算と名付けられたのは近年ですが、片方の数を分解して10のまとまりを作るという考え方は、おそらく有史以来不変のものでしょう。親世代も、タイルで慣れ親しんだのではないでしょうか。

通常、
5+8=13
という三つの数だけを書けばよいところ、さくらんぼ計算では
5+8=13
/\
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のように五つの数を書きます。表記が複雑になるので、ぱっと見の複雑さは増します。しかしそれが表している内容は、10のまとまりを作るということのみです。さくらんぼ計算の表記に混乱しているということは、繰り上がりの計算の考え方そのものにつまずいているということです。
考えてもみてください。たやすくこの計算ができる大人にとって、さくらんぼ計算はわずらわしくこそあれ、「できない、わからない!」とはならないはずです。つまずきの原因をさくらんぼ計算のせいにしては、子供が気の毒です。
たしかに、もし単に答えを出すことだけを子供に求めるならば、やり方を指定する必要はありません。しかし、子供に必要なのは考え方を身に付けることです。さくらんぼ計算は、答えを出すための方法ではなく、考え方を学ぶための練習方法なのです。練習ですから、面倒でも繰り返し行うことが大切です。それに、さくらんぼ計算を練習するのは、それほど長い期間ではありません。
ネット上では、「こんなレベルの計算方法を強制するべきではない」との論も支持を得ていました。ですが、大人から見れば「こんなレベル」でも、子供にとってはそうではありません。一つ一つの手順を確認することが大切です。
さくらんぼ計算が、すべての子供に適しているわけではないでしょう。これを使わない方がスムーズに理解できる子供もいるはずです。ですがそれはすべての学習方法に言えることです。学校では、多くの学習方法の中で、より多くの子供に対して成果のある学習方法が選択されています。
これについては、さくらんぼ計算に限ったことではないので、別の記事であらためてお伝えしたいと思います。
追記:書きました!
書いてない項目で減点するのはおかしくないですか Is it wrong to reduce scores by unwritten rules?
批判は大いになされてよいと思います。ただし、批判する前に、なぜ必要なのか、なぜ存在しているのかを知ったほうが、実りある話し合いができるはずです。
10数年前から※1小学校で取り入れられている計算方法なので、今の小学生の親世代にはなじみのないやり方だと思います。初見の感想は、「え、何これ。……ああそういうことか。なんでわざわざこんなことするの? わかりにくくない?」であることでしょう。
※1 J-CASTニュース 小学校算数の「さくらんぼ計算」に戸惑う声 文科省の見解は?
2018年11月12日、ツイッターでこの計算方法を批判するツイートが人気を集めました。賛否両論の論争になりましたが、数の上では批判が圧倒的です。その内容はおもに次の三点のようです。
- 手間が増えて混乱する
- やり方を強制するのはおかしい
- 明文化されていないのに、テストで減点するのはおかしい
たしかに。どうして学校ではこのような方法を取り入れているのでしょうか。
さくらんぼ計算てなんのためにやってるの?
繰り上がりのある足し算の難しさ
小学校1年生の算数でつまずく子が多い単元の一つが、繰り上がりのある足し算です。これにはいくつかの原因があります。
まず、10のまとまりという考え方が現れることです。大人にとってごく当たり前の十進法という考え方を、子供はここで獲得します。
次に、指を使った計算ができないことです。これまで実物を用いてやってきた計算を、頭の中で行わなければならなくなります。
- 10のまとまりを理解する
- 頭の中での計算する
という二つのハードルをクリアしなければならないので、繰り上がりのある足し算は、それまでの計算と比べ物にならないくらい難しいのです。
繰り上がりのお助けマン
そんな繰り上がりのある足し算に苦しむ子供たちのために考え出された方法が、さくらんぼ計算です。さくらんぼ計算では、数を分解して10のまとまりを作る考え方を、視覚的に理解することができます。つまり、前述の「10のまとまりを理解する」くせをつけると同時に、「頭の中で計算する」を視覚的に補助する働きがあるのです。
計算に慣れた人から見ればわずらわしくも見えるさくらんぼ計算ですが、小さい子が繰り上がりの考え方を身に付けるのに適した方法なのです。
さくらんぼ計算と名付けられたのは近年ですが、片方の数を分解して10のまとまりを作るという考え方は、おそらく有史以来不変のものでしょう。親世代も、タイルで慣れ親しんだのではないでしょうか。

ネット上の疑問に対して
ツイッターで噴出した疑問にも答えていきたいと思います。よけいにわかりにくくなるのでは?
通常、
5+8=13
という三つの数だけを書けばよいところ、さくらんぼ計算では
5+8=13
/\
5 3
のように五つの数を書きます。表記が複雑になるので、ぱっと見の複雑さは増します。しかしそれが表している内容は、10のまとまりを作るということのみです。さくらんぼ計算の表記に混乱しているということは、繰り上がりの計算の考え方そのものにつまずいているということです。
考えてもみてください。たやすくこの計算ができる大人にとって、さくらんぼ計算はわずらわしくこそあれ、「できない、わからない!」とはならないはずです。つまずきの原因をさくらんぼ計算のせいにしては、子供が気の毒です。
やり方を強制するのはどうなの?
たしかに、もし単に答えを出すことだけを子供に求めるならば、やり方を指定する必要はありません。しかし、子供に必要なのは考え方を身に付けることです。さくらんぼ計算は、答えを出すための方法ではなく、考え方を学ぶための練習方法なのです。練習ですから、面倒でも繰り返し行うことが大切です。それに、さくらんぼ計算を練習するのは、それほど長い期間ではありません。
ネット上では、「こんなレベルの計算方法を強制するべきではない」との論も支持を得ていました。ですが、大人から見れば「こんなレベル」でも、子供にとってはそうではありません。一つ一つの手順を確認することが大切です。
合わない子もいるのでは?
さくらんぼ計算が、すべての子供に適しているわけではないでしょう。これを使わない方がスムーズに理解できる子供もいるはずです。ですがそれはすべての学習方法に言えることです。学校では、多くの学習方法の中で、より多くの子供に対して成果のある学習方法が選択されています。
明文化されてないのにテストで減点するのはおかしくない?
これについては、さくらんぼ計算に限ったことではないので、別の記事であらためてお伝えしたいと思います。
追記:書きました!
書いてない項目で減点するのはおかしくないですか Is it wrong to reduce scores by unwritten rules?
まとめ
さくらんぼ計算がいいか悪いかということは、これからも議論されるべきでしょう。そうしてより効果のある学習方法が発見されればよりよいことです。批判は大いになされてよいと思います。ただし、批判する前に、なぜ必要なのか、なぜ存在しているのかを知ったほうが、実りある話し合いができるはずです。