おことわり
うつ病の症状はひとそれぞれ違います。また、うつ病の原因は現在も解明されていません。この記事は医学的な根拠に基づくものではありません。個人の体験記として、みなさまのご理解の一助となれば幸いです。
「うつ病」という言葉を聞いたことがない人は、平成30年の現在、ほとんどいないことでしょう。つい20年前、90年代には、「うつ病」という言葉はあまり一般に知られていませんでしたから、認知度はかなり高まったと言えます。
しかし、うつ病がどんな病気かと聞かれれば、なかなか実感がわかないのではないでしょうか。あなた自身がなったことがなく、ご家族で罹患した方がいなければ、よくわからないのも当然でしょう。
わかります。私も自分がうつ病になる前はそんな認識でした。それでは、うつ病について簡単にお話ししましょう。
うつ病のメカニズム
脳の危険信号
人は働くと疲れを感じます。ストレスを受けると恐怖や不安を感じます。けがをすれば痛みを感じます。これらはすべて、脳神経の働きによるものです。疲れや不安、痛みは、体が限界を超えて壊れてしまうのを防いでくれる、大切な信号です。これによって、人は適切な休息をとることができるのです。
いっぽうで、人の脳には、これらの信号を一時的に無視する機能も備わっています。目の前に危険が迫っているときには、疲れや痛みを無視して走って逃げることができます。「火事場の馬鹿力」というやつです。また、駅伝などのスポーツ選手は、強い意思の力で危険信号を抑え込み、限界以上の力を引き出しています。
当然の結果として、火事場の馬鹿力を使った後は、体の力が抜けきってしまいます。限界以上の力を使った体を守るために、脳が大量の危険信号を発し、体を絶対安静にしようとするからです。危険な状態です。
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出典:読売オンライン |
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出典:時事ドットコム |
脳神経のオーバーヒート
さて、このような状態は、通常めったに起こることはありません。ですが、もし、逃げることも休むこともできない状況が続いてしまった場合、体にはどのような変化が起こるのでしょうか。
1
疲労が限界に達しているのに、なんらかのプレッシャーにより、働き続ける。
あるいは、強いストレスを受け続ける。


2
脳が危険信号として、倦怠感や不安感を発生させる。
「休め!」「逃げろ!」
3
危険信号を、意思の力やプレッシャーによる緊張状態によって強引に抑え込み、さらに働き続ける。覚醒剤と鎮静剤を同時に投与しているようなもの。
これが慢性的になると……
4
気付かないうちに、脳から常に大量の危険信号が出続けることになる。
蛇口をひねっても消火が追いつかないので、蛇口をぶっ壊している状態。
5
ひとたび興奮状態が途切れると、それまで拮抗していた膨大な不安感と倦怠感が押し寄せ、筋肉は麻痺したように動かなくなる。

6
常に強い不安、恐怖、倦怠感に襲われる。
仕事や人とのかかわりなどの社会生活が困難になる。
7
「できない自分」への無力感や周囲への申し訳なさにより、症状が悪化する。
食事や睡眠など日常生活が困難になる。
これがうつ病のメカニズムです。
ポイントとなるのは3の段階です。真面目で責任感が強く、我慢強く努力を続けられる人ほど、3の段階に陥ってしまいやすく、症状が悪化してしまいます。
4の段階になってしまうと、どんなに意思が強い人でも、本人の力ではどうすることもできません。なぜなら、本人の意思の最大値を超える量の抑制物質が分泌されているからです。
このとき、通常では感じることのできない強さの恐怖、不安、悲しみ、絶望、無力感、罪悪感などを味わいます。意思が強いほど、我慢していた期間が長いほど大きな苦痛を受けることになります。
理解して向き合うこと
いかがだったでしょうか。今回は、うつ病のメカニズムについてお話ししました。
「うつ病の人には『がんばれ』と言っちゃだめ」とか、「心の風邪」とか、断片的な情報だけを聞いても、なぜそうなのかを知らなければ、うつ病に向き合うことはできません。
うつ病の詳しい症状や対処法については、別の記事でまとめるつもりです。興味があれば合わせてお読みください。あなた、もしくはあなたの家族や友人が、うつ病によりよく向き合えることを願っています。