日本の学校教育の特色の一つと言えるのが、部活動です。
日本の学校に通っていた人であれば、楽しい思い出か苦い思い出かはともかく、なじみ深いものであることでしょう。
部活動って何?
海外の方のために簡単に説明しましょう。日本の中学校、高等学校には、「部活動/Bukatsu」と呼ばれる多種多様なサークルがあります。その種類は学校ごとに異なりますが、サッカーや野球、陸上、卓球などのスポーツは一般的です。また、吹奏楽、美術などの芸術分野の部活動も、多くの学校にあります。
大げさでなく、日本の学校教育は授業と部活動によって成り立っていると言ってもいいでしょう。部活動は単なる趣味の時間ではありません。学生の本分は、勉強と部活動で努力し成果を上げることとされています。これをくそくらえなサムライ的表現で「文武両道/Bumbu-Ryodo」と言います。
部活動を指導し、監督するのは授業を教えている教師です。教師は魔法の力によって、部活動に対しても高い指導力をもっています。
ここがすごい! 日本の部活動
日本の部活動は、諸外国のどれとも異なる、独自のシステムによって成り立っています。まず、ほぼすべての生徒がなんらかの部活に所属していることが挙げられます。そして、入学してから卒業まで、ずっと同じ部活動を行うことが一般的です。アメリカのように、シーズンごとに異なる競技を行うわけではありません。
次に、その活動時間が非常に長いことが挙げられます。
部活動は平日の16時ごろから開催され、18時30分に終了します。始業前や、昼休みに練習することもあります。運動部であれば土日の練習や大会があることも普通です。夏休みなどの長期休業中ともなれば、さらに長時間の活動があります。
もちろんすべて教師が引率し監督します。
少し怖くなってきましたか?
日本の部活動はおどろくほどハイレベル
このような環境から、部活動は競技チームとして高いレベルを保っています。人気のスポーツである野球を例に挙げましょう。
日本では、学生が所属できるもっともレベルの高い野球チームは、学校の部活です。強豪チーム=強豪校ということになります。そして、全国の高校の野球部の頂点を決める「甲子園」が、同時に日本最高峰の大会となっています。
いっぽう、日本同様に野球の盛んなアメリカでは、高校チームの全国大会はありません。優秀な選手は、レベルの高い環境を求めて、学校外のチームに参加しています。
このような状況は野球に限ったことではありません。
サッカーの「全国高校サッカー選手権大会」も、バレーボールの「全日本バレーボール高等学校選手権大会」も、バスケットボールの「全国高等学校バスケットボール選手権大会」も、すべて!学校の部活チームで参加する大会です。
日本の学生競技者は、レベルの高い環境を求めた場合、強いリーグに入るのではなく、強い部活のある高校へ進学するのです。
部活動であるメリット
もちろん日本にも、学校とは直接関係のない社会教育団体が運営するさまざまなクラブが地域に存在しますし、それに属している学生もたくさんいます。それでは、部活動が存在する意義とはなんでしょうか。まず、無償だということがあげられます。校外の団体の多くは運営費を徴収していますが、部活動は学校教育の一環なので基本的に無償です。
次に、同じ学校の生徒だけで構成される集団なので、学校生活における友達づくりに役立ちます。努力すれば同級生や先輩、後輩、教師から認められ、学校に行くのが楽しくなります。これは学校外の活動には代えられない価値といえるでしょう。
また、部活動は、勉強が得意でない学生にとって輝ける場となりえます。
授業を教える教師には反抗する生徒も、部活の顧問の教師とは信頼関係を結べることがあります。それは、教師と生徒が一つのチームとなり、同じ目標に向かって努力することで、強い絆が生まれるからです。
授業が終わってから暗くなるまでの時間、子供が安全に過ごせるというのも良いところです。
ただし、上にあげた「人間関係が連続する」という点は、デメリットにもなりえます。部活で教師と生徒の関係が悪化すれば、授業も立ちいかなくなるでしょう。学級で起こった人間関係のトラブルが、放課後まで継続してしまうこともあり得ます。
影響力のあるシステムなので、運用には注意が必要です。
そんなスゲー制度、どうやって運営してるん?
この奇跡のような制度は、多くの教員の命を生贄に捧げることによって成立しています。私は現在の制度のまま部活動を存続させることは、教育上マイナスであると考えています。というより、存続は不可能であるといっていいでしょう。
奇跡の制度、部活動。