楽しいファミコン言葉 Funny "Fami-con-words"


「ファミコン言葉」をご存知でしょうか。
セーブ、全クリ、Bダッシュ……。いえ、そのファミコンではありません。
ファミコン言葉とは、ファミリーレストランやコンビニエンスストアの接客で用いられる、独特な敬語のことです。

たとえば、「こちら、トリノ風ドリアになります」という言い方は典型的なそれです。
「~になる」は、「ご利用になりますか」のように、相手の行動に付けることによって尊敬の意味を表す言葉です。それがいつのまにか、「ハンバーグになります」、「2066円になります」と、物に付けて用いられるようになってしまいました。これでは誰を尊敬しているのかわかりません。

※ 量が多いことを強調するためには使用できます。「募金の総額は21万円になりました」。



もちろん、「ハンバーグになります」と言われて、「丁寧な言葉遣いだなあ」と満足する人もいるでしょう。使っている人も、丁寧な気持ちを込めて喋っています。ですから、もしかすると百年くらい経てば、歴史ある敬語として認められるようになるかもしれません。

しかし、当然違和感を覚える人もいます。
誰に対しても心地よく接するためには、気持ちさえあれば十分とはいきません。その場に合った所作、身だしなみ、言葉遣いが重んじられるのは言うまでもないでしょう。「ファミコン言葉」というのは、「接客の教育がなされていない人たちの使う言葉」という皮肉の込められた名前です。


さて、私はというと、このちょっと変わった言葉遣いが気になって仕方ないタイプです。
繊細過ぎる国語教師がファミリーレストランへ行くと、どのような気持ちで過ごしているのかご紹介しましょう。



 入店

店員:いらっしゃいませ。お客様1名様ですか。
私 :はい。(1名って「様」いらなくね?)

店員:おタバコはお吸いになられますか。
私 :いえ、吸いません。(そして私はそこまで偉くありません)

※「お吸いになりますか」もしくは「吸われますか」がいいです。両方合わせて使うのは天皇に対してだけです。タバコはすでに日本語として久しいので、「おタバコ」に目くじらを立てなくてもいいでしょう。


注文


ピンポーン
店員:(1秒)はい大変お待たせいたしましたー。
いや待ってねーよ! 
早いのはいいけど、お前それ本当に待たせた時にも同じトーンで言ってるだろ。

私 :この「触れただけで崩れちゃうアンガス牛のやわらかステーキ」ください。
店員:やわらかステーキがおひとつー。
略すなよ! 全部言った俺がばかみたいだろ!

私 :あ、以上です。
店員:以上でよろしいですか?
私 :はあ、以上です。
店員:ご注文繰り返します。
一品だから繰り返さなくていいよ! むしろ繰り返すくらいなら略さず言えよ!

店員:お待たせいたしました。こちら、アンガス牛のやわらかステーキになります。
ならねえよ! ステーキに成るっていうならアンガス牛そのものを出せよ。



会計

店員:お会計1499円になります。
だからならねえよ! そんな「東京ドーム3個ぶんになります」みたいなすげえ量じゃねえよ。

お釣りあるパターン

店員:1500円からお預かりします。
「から」っていうか、1500円そのものを預けてるからね。

店員:1円とレシートのお返しになります。
レシートは返すっていうか、渡してね。

店員:ご確認くださいませ!
いや確認の必要ない! 1円! わかる!


お釣りなしパターン

店員:1499円ちょうどお預かりします。
いや預けないよ、ちょうど払ってるからね。

店員:レシートは大丈夫ですか
いや俺が知るかよ!!

※ 「大丈夫」は重大な問題の有無を計る語。「レシートに異常はないですか」の意味になる。



ハァ、ハァ……。
このように、繊細な国語教師がファミリーレストランへ行くと、一人でサンドウィッチマンのコントみたいなのをやり続けることになります。


出典 TBS

言葉そのものがおかしい場合と、マニュアル通りに喋ろうとするあまり、状況によって変なことを言ってしまう場合とがありましたね。


みんなが言葉にぎすぎすしてほしいとは思いませんが、丁寧な気持ちがあるのであれば、それに見合った言葉を身に付けたいと思うものでしょう。一見丁寧にも聞こえるファミコン言葉は、偽ブランドで着飾るようなものです。自分の内面を表すものと思って、言葉に触れてみてはいかがでしょうか。