昨今は、裁量労働制の適用業種拡大が大変話題になっていますね。
上記の点は、労使協定でしっかりと管理する必要があります。
異常なデータの露見や野党の攻勢、民間の反対運動などによって、今回の働き方改革法案からは削除されることとなりましたが、手放しに安心していい状況とは言えないでしょう。
危惧されているのは「みなし労働時間」による「定額働かせ放題」です。内容はえげつないですが、名付けのセンスには脱帽です。
裁量労働制のいいところ
ところで、裁量労働制はなにも悪の制度というわけではありません。
定時に出勤する必要のない、あるいは臨機応変に働く仕事にとっては、適した制度ではないでしょうか。
ざっくり裁量労働制
たとえばデザイナーのように、個人で一定量の成果を出す仕事なら、出社する時間を定められないのはメリットだといえますね。あるいは弁護士やライターのように、さまざまな時間に調査に出る仕事にも合っているといえるでしょう。- 実際に何時間働いたかに関わらず、お給料は定額 ※休日や深夜の出勤には手当が出る
- 他の人に合わせる必要がない仕事や、臨機応変な時間の仕事にマッチ
反対に、決められた時間に顧客に対応する必要のある窓口業務などにはまったく適しません。ここが重要です。
裁量労働制を運用する条件
裁量労働制を適切に運用するためには、気を付けなければいけない点があります。
- 労働状況や業務量を精査して、みなし労働時間を計算する。
- みなされた時間に収まらない量の仕事を課すことを使用者に禁止する。
- 各自の業務量にばらつきが出ないようにする。
上記の点は、労使協定でしっかりと管理する必要があります。
でないと、文字通りの定額働かせ放題になってしまいます。これらの基本的なルールを履行できない業種や企業は、採用労働制を行ってはいけません。もちろん、そのようなことがないように労働基準法で規定されているのですが、今後新しい法案で規制が緩和される可能性は無視できません。
労働者のことを考えず、単に定額働かせ放題制度として企業に導入されてしまうのでは……という懸念から、各方面で反対運動が起きているのも納得できます。
先進すぎる取り組み
それでは、実際に上記の規定を守らず、さらには適用するべきでない業種において裁量労働制を採用してしまった例を見てみましょう。はたしてどのようなことが起こるでしょうか。裁量労働制ならぬ、超裁量労働制を採用している企業の例をお伝えしましょう。
そうです。教員は一般的な公務員と異なり、採用労働制を超えた究極の制度、「超裁量労働制」を採用しています。
業務の特徴として、定時の仕事も定時外の仕事も多いことが挙げられます。そのため、実労働時間ではなくみなし労働時間によって給与が支払われますが、働く時間に裁量はありません。ですから私たち教員は、定時+臨時+自由な時間に働くことができます!
超裁量労働制のここがすごい
- 定時+指示された時間+自由な時間に働くことができる!
- 給与はみなし労働時間による完全定額制。残業、時間外労働、休日出勤手当なし!
- みなし労働時間は、入念な調査(昭和41年)に基づいて決定!
- 労使協定を結ばないことにより、仕事を無尽蔵に増やすことに成功!
- 担任や部活の有無、教科の違いにより、仕事量の大幅な格差を実現!
- デモ、スト、労働組合などの団体行動、団体交渉は処罰の対象!
もちろん私も定時に授業を行い、時間外に部活動を指導し、自宅では自由な時間を利用して深夜2時半までテストの採点を行っています。
いかがだったでしょうか。
世界に先駆けて日本の教育公務員に導入された超裁量労働制。およそ先進国の話とは思えない強力なシステムによって、今日の日本の教育は支えられています。
現在の日本の労働環境は、長時間労働や非正規雇用の拡大など、さまざまな問題を抱えています。それらを解決するための法整備や意識改革が必要なのは言うまでもないでしょう。
新しい制度が労働者にとってアンフェアなものとならないよう、労働者も使用者も政治家も、国民全体で考えていかなければなりません。
問題を抱えた制度を累積した結果、労働者がどれだけ地獄を見ることができるかどうかは、引き続き当ブログでご紹介していきます。