みなさん、この国の学校教育において、一番ヤバいことはなんだと思いますか。
学校教育が抱える問題は多くありますが、とくに「この国の」です。
正解は……
教員に残業代が支払われないことです。
……え、それなの?
何がヤバいのか
教員に残業代が支払われないと何がそんなにヤバいの? と思うかもしれません。「公務員の給与はカットすればするほどよい」という考えの方もたまにいますしね。
シンプルに図にするとこういう感じです。
残業代ゼロ
↓
いくらでも働かせてよくなる
↓
教員の超多忙化・無駄な仕事の増加
↓
教育の質の低下
という構造です。
現在の日本が抱えるあらゆる教育問題の根っこに、この教員の超多忙化があるといっても過言ではありません。それを生み出しているのが残業代ゼロ、定額働かせ放題なのです。
なんで残業代がないの?
法律でそう決められています。
実は正確に言うと、残業代が無いのではなくて、残業していないことになっているのです。多くの教員は一ヶ月に100時間から200時間程度の時間外労働をしていますが、これらはすべて「教員が好きで勝手にやっていること」とみなされています。
※ 「過労死ライン」は80時間
だから体を壊そうが精神疾患になろうが労災は降りないし、過労死もほとんど認められません。
教員に残業なんて存在しないよ。すべての教員は16時45分に退勤して家に帰っているはずだからね! 部活? 委員会? 好きで勝手にやってることは知らないよ!
すがすがしいスタンスですね。
このおじさんが誰かというと、法律であり、文科省であり、議員であり、地方自治体であり教育委員会であり……すべて教員を使役するシステムの集合体です。文科省はマジでこのせりふのような内容で公式発表してますからね。
※ 悪いのはシステムです。勤めてる人は基本的に教育のことをちゃんと考えています。
なんでこんな法律があるのかというと、実はあんまり合理的な理由はないです。かなり昔にとりあえず作った法律なのですが、残業代払わなくてラッキーてなことで今も残っています。
無駄な仕事の増加、増加、増加……
定額働かせ放題と書きましたが、実際の状況はもっと終わっています。
一般的な企業に置き換えて考えてみましょう。いくら社員を定額で働かせられる状況があったとしても、利益率の低い仕事はさせないはずです。費用対効果を調べ、業務を整理することで、より利益率の高い仕事に人的資源を割くでしょう。
フフ……もうおわかりですね。
学校は公共機関ですので、教員にいくら無駄な仕事をさせたとしても、業績が悪化するということがありません。また、他の地方公務員と違って何時間働かせてもいい。完璧です。無駄な仕事を減らす理由が見当たりませんね!
無駄な仕事を無限に増加するシステムの完成です!
給与ベースで考えた場合、このシステムは完璧です。しかし、教育のクオリティベースで考えてみれば最悪なシステムだと言わざるを得ないでしょう。
ごく当然のことながら、無駄な仕事が増えれば増えるほど、授業や行事、生徒指導などの大切な業務にあてる時間が減るのですから。
さらには激務で体を壊して退職する教員が増え、教員を目指す学生は減少しています。今、教育を支える人材が枯渇状態にあるのです。
学校を再生するために
令和現在、教育への関心はますます高まりを見せています。教育をよりよくしようとする各所の動きも活発で、さまざまな改革がなされています。とても喜ばしいことです。
しかしそのいっぽうで、学校はこれ以上無いほど疲弊しきっています。それは教師ばかりでなく、詰め込みのカリキュラムに付き合わされる生徒も同じです。こんな状態では、どれだけ優れた教育施策を実行しても、効果が上がることはありません
今、教育力の低下を止めなければ、20年後、30年後の日本は、経済的にも文化的にも非常に苦しい立場に追いこまれてしまうでしょう。
教育問題の根幹にある大きな原因について、まずは知ってください。知れば対策も立てられます。より多くの人々がこの問題について知り、それぞれの立場で考えてくださることを祈っています。