「○○ちゃんとは別のクラスにしてもらえませんか」 "Can you put them in a different class?"

保護者からの相談はいつもウェルカムなのですが、そんな中で唯一、これを言われるとけっこう悩むんだよな~……という内容があります。



来年度、〇〇ちゃんとは別のクラスにしてもらえませんか?


「……同じクラスにしてもらえませんか」というのも含めて、1クラスあたり年に0~2件くらい相談を受けることがあります。
理由は人間関係のトラブルがほとんどです。それが仮にいじめともなれば、できるだけ子供同士を遠ざけたいというのは、当然の親心だと思います。





どのように対応するのか

実際にそのような相談を受けた場合には、理由をお聞きして、事情をしっかりと把握します。そして、安心して生活できるようにサポートすることをお伝えしたうえで、「ただしクラス編成に関してはお約束できません」とお断りすることになっています。



そのようにお断りする理由は2つあります。

1 物理的に不可能になる恐れがあるから
もしこのような相談を10件されたとしたら、すべての要求を叶えて学級を編成することは非常に難しくなります。一部の要求だけに応えるわけにはいかないので、全体にお断りをしています。

2 教育上の公正を期すため
学級の編成は、すべての生徒に対して公正であり、かつ教育的効果が最大限に高まるように考えて行われています。そのため、たとえ保護者からであっても、個人の要望に応えるわけにはいかないのです。




希望は通らないの?

さて、そういう理由で「お約束できない」とお断りはするのですが、実際のクラス編成に影響はないのでしょうか。


本当のことを言うと、ほとんどの場合希望が通ります

個人的にはあまり良くないことだと思っています。



教員側が保護者の希望を通さざるをえないのには理由があります。

1 信頼感が薄れる
希望が通らなかったとき、保護者側にはどうしても「せっかく相談したのに無視された」という気持ちが残ってしまいます。そして、「どうせまた相談しても無駄かも」という心理も生まれてしまい、その後の信頼関係が崩れる恐れがあります。

2 不平等感が出る
複数の保護者からクラス編成への要望があった場合、当然の結果として、たまたま希望が通る人と通らない人とが出ます。保護者同士で「うちは希望通ったよ」なんて話を聞いたら、「うちだけ無視された」という気持ちになってしまうでしょう。


これらのことは、どれだけ「約束できない」とお断りしても、保護者に納得してもらっても、起こってしまいます。というか私だって逆の立場なら、口には出さないとしてもそういう気持ちになると思います。仕方のないことです。


ので、実際には相談を受けると、可能な限り希望通りに編成してしまいます。一見誰も損をしていないように見えるし、一番角が立たないやり方だからです。

でも、口に出さないだけで、クラス編成とか担任とかの希望って、全生徒と全保護者がもっているものですよね。だから、言ったもん勝ちになってしまうのは、やっぱり公正さに欠けると私は思うのです。





そもそも共同体のメンバーはコントロールできない

ところで、実社会の共同体のメンバーは、ふつう思い通りにはいかないものです。気に食わない上司も、一緒にいるだけでストレスの溜まる同僚も、近所迷惑なお隣さんも、自分の意志で移動させることはできませんね……。

もちろん、ハラスメントやいじめなどは当然裁かれるべきことです。それでも、加害者が異動や退職になるかどうかは場合によります。


学校に話を戻しましょう。
仮にクラスを思い通りにできたとしても、学年のメンバーは動かせません。苦手な子とも、まったく顔を合わせないというわけにはいかないでしょう。そもそも単学級の学年であれば、「別々のクラスに」という選択肢すらないのです。

学級は大切な集団ですが、そこにこだわりすぎても窮屈になってしまいます。部活やご近所仲間など、ほかの人間関係にも目を向けてみましょう。そして、苦手な人とも適切な距離で付き合っていく。学校はそういう人間関係の練習の場所でもあるのですね。





心配しすぎなくても大丈夫

これからも、保護者のみなさんには、困っていることや気になることを、どんどん相談していただきたいと思います。ただ、クラス編成に関する要望を伝えるかどうかは、十分考えてからにしたほうがよいかもしれません。

クラス編成は、教員が公正に協議をして行っています。相談していただいた内容も含めて、全体のことを考えて決めています。ですから、人間関係についても、そうそう無神経なことにはならないということはお約束できると思いますよ。