ブラック部活
「ブラック部活」という言葉が有名になりました。記憶では、言葉自体は2011年頃にネットの一部で使用されていたと思います。その後2016年頃から部活動に関する問題がTVのニュースやドキュメンタリーで取り上げられるようになり、世間の関心とともに言葉も広まっていったように思います。
どんな部活を「ブラック部活」と言うかというと、次の2つの問題点を問うことが多いですね。
1 問題のある指導・活動
- 生徒の人格を否定するような指導や体罰
- 怪我の恐れのある危険な練習
- 支配的な規則、上下関係
このような指導は言うまでもなく許されないことです。こういった支配的なスポーツ指導は、とくに高校や大学、さらにはプロスポーツの領域で問題となりました。中学校よりも閉鎖的な環境で指導が行われるぶん、専制的な体制が作られてしまったのかもしれません。
2017年の日馬富士による傷害事件、2018年の伊調馨選手へのパワハラ問題、そして同年の日大アメフト部反則タックル問題など、次々にスポーツ界の問題がメディアで取り上げられた10年代後半。スポーツ指導に潜む旧時代的な圧政への関心が高まりました。
2 長時間の拘束
- 土日も休み無し、朝練も昼練もあり
- 定期テスト2周間前でも、なんだかんだ理由をつけて実施
- 夏休みも冬休みも毎日
- 大会では保護者の送迎や応援も必須……
中学校の部活動において、一部で見られるのがこのような長時間の拘束です。熱心に部活動に励むことはもちろん良いことです。でも、勉強も友達との遊びも二の次にして部活動に注力することが、義務教育を受ける中学生として健全なことなのでしょうか。いやいやちょっとやりすぎでは……? との声も聞かれます。
ええ、まあやりすぎですよ。フツーに。
中学校は競技に勝てるアスリートを養成する機関ではないのですから。教育課程全体とのバランスを考えて実施されるべきです。
どうしてこんなにやりすぎちゃうのかと言いますと、なんのことはない、ルールがないからです。戦後75年間そして現在、部活動に関して公的なルールは一切ありません。ルール無用で競争させたら、そりゃ過激化するに決まっています。ドーピングが横行してないだけ良心があったと言うべきかもしれません。
部活動ガイドライン
ルールが無いと申しましたが、「例示」とか「指針」とかいうものはこれまでにも幾度も策定されてきました。影響力のあるものもあり、無いものもありました。
そんな中で、現場の教師の体感として、「今回のはなんだか今までになく、文科省や教育委員会が本格的に実施しようとしているぞ」と感じている指針があります。それが、2018年3月に策定・通知された「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」、通称「部活動ガイドライン」です。
いろいろ書かれているのですけれども、ここで押さえておきたいのは休養日等の設定についての項目です。
- 平日に1日、週末も1日以上を休養日とする
- 1日の活動時間は、長くとも2時間程度、休業日は3時間程度とする
どうでしょうか。さまざまな意見があると思います。
いわゆる「バリバリやっている」系の運動部(や吹奏楽部)からすれば、活動は縮小されることになるでしょう。パフォーマンスや記録は落ちる可能性もあります。逆に上がる可能性もあります。そこには賛否両論あることでしょう。
しかし、いずれにしてもいつまでも無法地帯でいるわけにはいきません。文科省が「とにかくガイドラインを決めたから、十分かどうかはわからないけどこれでやってみよう」としてくれたことは大きいと思います。
部活動ガイドラインの実効性は?
「部活動ガイドライン」には、法的な拘束力や罰則の規定はありません。これを適当と見るか、あるいは不十分と見るか。時を待たなければわかりません。
教育の世界には、効果を伴わない、形骸化したルールがそれはもう山のようにあります。それらを見るに、効力に信用が置けるかといえば疑問です。ただ、前述したように、現場の肌感覚として、これまでにないレベルで「マジ」な感じが伝わってきています。これはまさに、部活動のあり方に対する世間の関心が高まっている結果だと思います。ガイドラインの実効性を高めるためには、引き続き私たち市民が、学校教育へ関心の目を向け続けることが大切です。
次回は、
ガイドラインが通知されて3年、部活動は変わった? 横行する「闇部活」
です。お楽しみに!