この記事のざっくり
さて、みなさんの予想通り、教員採用試験の倍率は順調に低下しています。
数値を見てみましょう。
ここ十年の推移はこんな感じです。
参考:文科省 公立学校教員採用選考試験の実施状況
下げ止まりません。
原因はいろいろあるのですが、大きいものは三つです。
- 景気回復による一般企業の採用者増加 → 志望者減
- 80年代に多く採用された世代の退職 → 採用枠増
そして、
- ブラック化した労働環境 → 志望者減
です。
まあ、以前からブラックではあったんですけども、一般企業がコンプライアンスの是正にむけて努力する中で、動きの遅い官公庁が取り残された感じですね。いや当然の結果すぎてむしろ安心します。
「教員の質の低下が心配」…ってそこ?
オンライン新聞各社の見出しを見てみました。産経新聞 2019.5.22
小学教員の競争率、7年連続減の3・2倍 懸念される質の低下
毎日新聞 2019.5.9
小学校教員採用倍率 過去最低の3.2倍 質の維持困難な「危険水域」近づく
読売新聞 2019.5.22
「多忙な教職」学生敬遠、公立小の採用倍率低迷…教委「質の低下」に危機感
※すでに削除
ここで各社の言う「質」とは、教員の質のことです。
「競争倍率が下がっているから、しょうもない人材が入ってきちゃうのが心配だな~」ということだと思うのですが、ちょっと待った。心配するところが違いません?
深刻なのは、学校現場そのものです。
今、学校は、先生たちが生き生きと働ける職場ではない。志望者の減少はそれを物語っています。魅力のない職場で充実した教育が実現できるでしょうか。答えはNOです。
私は、夢と熱意と能力にあふれる優秀な若手教員が、あっという間に壊れて退職していくのを見てきました。優秀な人材が入ってきても潰れてしまう現状があるのです。
この状況で教員の質の低下を心配するのは、船が沈没しそうだってときに、「乗組員の募集したけど希望者少ないなあ、質の低下が心配だな~」って言っているようなものです。
何をすべきか間違えちゃいけません。
今第一に必要なのは教員の質の向上ではありません。教員が潰れないような、そしてベストパフォーマンスを発揮できる職場の実現です。
蛇足
あと、各社とも「3倍を切ると質の担保ができなくなる」みたいなことを言っていますが、これは担当者の感覚によるもので、とくに根拠はないと思われます。
そもそもこのご時世に大学の教育課程を修了して教員免許をとって、つぶしの効かない教員になってやろうって人材に、教員の資質を疑う必要ある? その人たちを大事に教育して、元気に働いてもらうことのほうが大切だと思います。